2005年12月23日
Nature Rev Neurosci 12月号
Neuroscience nanotechnology: progress, opportunities and challenges
Gabriel A. Silva
ニューロサイエンスとナノテクについての Review。先端技術については勉強しとかないといけないなー、と常々思っているので、とりあえず読んでみました。この Review で紹介されたあったのは、おもに以下の技術について(table1より)。(3)-(4)のあたりが、この著者の専門みたい。
(1) Molecular deposition & Nano-lithographic patterning
リソグラフィー(露光技術。半導体の回路パターンなどを作るときに使う)や有機分子の蒸着技術などを応用して、なにか bio-interactive なパターン回路をナノメーターの解像度で作ってやろうというもの。
(2) Molecularly functionalized surface
基質の表面に、なにか molecular をつないでやって、その molecular の評価系みたいなものをつくろうというはなし。
(3) 量子ドット
量子ドットを、蛍光物質として使う。退色が少なく、鋭い emission spectrum をもつという特長があるらしい。この量子ドットになにか自分の好きな分子をくっつけてやって、イメージングに使う、というもの。いま流行ってるみたい。
(4) 自己組織的に形成される nanotube
疎水性の炭素のしっぽと、親水性のペプチドからなる分子(脂肪みたいな感じかな)を作製する。このペプチド部分は、たとえば、IKVAVという分化を促進するような物質にしてやる。この分子は、ある条件下で自己組織的に集積して、nanotube を形成し、巨視的にはゲル状となる。で、このゲルのなかに projenitor cell を入れて飼ってやると、neuron への分化が促進されるとか。(文献 21)
(5) カーボン・フラーレンをベースとした化合物
Anti-oxidant としての働きをするらしい。
(6) Blood-brain barrier を通過する nanoparticle
drug delivery に使う。
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量子ドットというのは、最近よく耳にするのですが、僕は何のことか知りませんでした。今日 Wikipedia で調べたら、こんな感じに書いてました:
「主に半導体において、結晶成長や微細加工により電子の持つド・ブロイ波長(数nm~20nm、nmは1x10-9m)の粒状の構造を作ると、電子はその領域に閉じこめられ電子の状態密度は離散化される。閉じ込め方向を1次元にしたものを量子井戸構造、2次元のものを量子細線、そして3次元全ての方向から閉じ込めたものを、量子ドットと呼ぶ。」
ん?3次元すべての方向で電子を閉じこめるって、どういうことじゃろー?このページを読んだ感じでは、つまり結晶のサイズを電子のドブロイ波長程度にすれば、それだけで電子は閉じこめられてしまうみたいね。
簡単に計算してみます。
例えば、半導体材料として一般的な、GaAs (ガリウム砒素) の結晶の場合、1.43 eV 以上のエネルギーを与えると、電子は価電子帯からバンドギャップを飛び越え、伝導バンドへ移動する。で、普通であれば伝導バンドでは、電子のとりうるエネルギーは自由。
ここで、1.43eV での電子のドブロイ波長は、計算してみると、約 1 nm 。もし GaAs の結晶サイズ d が、3次元ともに 1 nm 程度であれば、電子は、伝導バンドでも、波長が d (の整数分の1)に拘束されてしまって、つまりとりうるエネルギーが離散的になる、というわけですね?(間違ってたらすいません。)
つまり、GaAs なり、CdSe なりの半導体の結晶のサイズをナノサイズの大きさにすればそれが量子ドットになるわけで、蛍光物質として使う場合は、結晶が壊れないかぎり退色しないし、発光のスペクトルも鋭くなるわけですね。難しいのは、粒子サイズをそろえること(←粒子サイズによってスペクトルが変わってくるので)と、粒子に自分の好きな有機分子をくっつけることかな?
量子ドットはもともとは、単一電子トランジスタやフォトニクス素子、レーザーなどへの応用に期待がもたれている材料みたいですね。
投稿者 sfujisawa : 2005年12月23日 23:34
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