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2005年12月31日

大晦日

2005年も今日で終わりですか。今年は僕にとっては激動の一年だったかな。博士論文まとめて、投稿論文書いて、渡米して、・・という感じで、えらいバタバタした一年だったな。ただ、研究の方は、実りあるデータの得られなかった一年だった。来年こそは、ですね。

投稿者 sfujisawa : 20:10 | コメント (0)

今年行った展覧会

今年行った展覧会 ベスト3

1位 東京国立西洋美術館 ラ・トゥール展 ☆☆☆
   企画:高橋明也(国立西洋美術館主任研究官)

ジョルジュ・ラ・トゥールは17世紀のフランスの画家。現在、真作は40点程しか残ってないのだが、この展覧会ではそのうち 20点近くを集めて来ていた。これは驚異的な数。どこの美術館でもラ・トゥールは目玉だから、貸してもらうのには相当苦労したであろう。

展示も良かった。初期の作品(「キリストと十二使徒」など)から、成熟期の作品までバランス良く配されていた。とくに、初期は古典主義的でがっちりとした絵を描いていたのが、成熟期に行くにしたがって、炎の光を効果的に用いた神秘的・幻想的な絵へと変化していく様子がじっくりと追えて良かった。

それで、今回のキュレーションで特に素晴らしかったのは、その初期作品と成熟期作品の展示室の間に、ラ・トゥールと同時代のフランスの画家、ジャック・カロの戦争画の版画を一枚展示していたところである。

おそらく、キュレーターの言わんとするところは、こうである:「ラ・トゥールやカロの生きた時代は、このような戦乱が暗い影を落としていた時代でもあった。カロは、その現実を直視して、諧謔を交えた版画を作製した。一方、ラ・トゥールは厳密な写実による性格描画から幻想的な描写へと変化していった。この「現実と幻想」という対比に注意して、ラ・トゥールを鑑賞してみてください。」

一枚こういう絵を置くことで、展示に深み(奥行き)が出てくる。さすが、と思わせるキュレーションでありました。

ところで、このページに企画者の高橋明也のインタビューが載ってて面白いです。『聖トマス』購入時の話とかも載ってます。


1位 東京国立近代美術館 『痕跡』展   ☆☆☆
   企画:尾崎信一郎(京都国立近代美術館主任研究官)

タイトルだけからは何の展覧会なのかさっぱり分からなかったので、あまり期待しないで見に行ったのだが、予想に反して素晴らしい展示であった。アンフォルメル~抽象表現主義以降の現代美術の流れを、「痕跡」という観点からとらえ直そう、という企画展示。目からウロコ、というか、あまりにも素晴らしくて、1ヶ月ぐらいショックを引きずってしまった。これについてはまたそのうち丁寧に書くと思います。


ベスト3といいつつ2つで終わってしまいましたが、その他の展覧会:

東京国立近代美術館 ゴッホ展     ☆
東京都現代美術館 イサム・ノグチ展
メトロポリタン美術館 常設展      ☆☆
メトロポリタン美術館 マティス展     ☆
メトロポリタン美術館 アンジェリコ展   ☆
メトロポリタン美術館 ゴッホ素描展    ☆
ワシントンナショナルギャラリー 常設展 ☆☆
MoMA セザンヌとピサロ展
MoMA 常設展               ☆
ホイットニー美術館 常設展        ☆
ノイエ美術館 シーレ展           ☆☆
PS1現代美術館               ☆☆


今年はバタバタしてたから、あんまり展覧会の数をこなせなかったですね。それにしても、横浜トリエンナーレは行きたかったなぁ。行った人がいたらまた感想を聞かせてください。

投稿者 sfujisawa : 20:07 | コメント (0)

2005年12月30日

Anatomy

以前も述べたが、僕の使っている記録室は、エヴァとけんじさんと僕の3人で使っている。で、一人が記録を始めると8時間以上かかってしまうので、1日に2人までしか記録室は使えない。それで、1~2ヶ月交代で順番で使っているのだが、今月・来月は、記録室を使うのがエヴァとけんじさんの番なので、僕は慢性記録実験はお休み。ここ最近は、主にデータ整理。

まあ、データ整理ばっかりやっていても飽きるので、最近は、余っているラットに、fluogold という retrograde tracer(ラボにあった)を打ち込んで、anatomy の実験などをやったりしている。(論文にはしないだろうけど、まあ勉強のつもりで。)

ギューリーにできあがったプレパラートを見せたら、けっこう喜んで、30分以上一生懸命観察してました。ギューリーは anatomy はけっこう好きみたいね。そもそもギューリーは解剖の論文にも有名なのが多いしね。

あと、ラボに Neuro-Lucida があるのを発見!(Neuro-Lucida とは、パソコンで顕微鏡のリアルタイム画像が読み込めて、パソコン画面上でマウスで画面の細胞をなぞって行くことによって解剖スケッチを行えるシステムの商標。)以前、岡崎生理研のサマースクールで川口研におじゃましたことがあって、そこで Neuro-Lucida を見た記憶があるのだが、実際自分で使うのは初めて。これがけっこう楽しくて、画面をつらつらなぞっているだけで、きれいな解剖の図ができていくので、ハマってしまう。解剖の仕事ももしかしたら楽しいかも、と思ったしだいでありました。(まあでも毎日 Lucida をやるとしたらそれはそれできついだろうな。。)

投稿者 sfujisawa : 22:54 | コメント (0)

2005年12月29日

Holiday

今週は、さすがに人が少ない。ラボに来ているのは、慢性記録実験をやっている人が2~3人と、あとギューリーがなぜか部屋にこもって物書きをしているぐらい。それ以外の人は、みんな旅行に行ったり、Hometown に戻ったりしてお休み。

僕は、今は慢性記録実験をしていないので、別にラボに行く必要はないのだが、特にやることがないので、ついついラボに足が向いてしまう。ほんとは、holiday 中はがっつり旅行でもしてメリハリつけた方が良いのだとは思うのだが。。でも、まあ、ほとんど人のいないラボでのんびりと研究するのも、また一興であります。

投稿者 sfujisawa : 23:39 | コメント (4)

2005年12月23日

Nature Rev Neurosci 12月号

Neuroscience nanotechnology: progress, opportunities and challenges
Gabriel A. Silva

ニューロサイエンスとナノテクについての Review。先端技術については勉強しとかないといけないなー、と常々思っているので、とりあえず読んでみました。この Review で紹介されたあったのは、おもに以下の技術について(table1より)。(3)-(4)のあたりが、この著者の専門みたい。

(1) Molecular deposition & Nano-lithographic patterning

リソグラフィー(露光技術。半導体の回路パターンなどを作るときに使う)や有機分子の蒸着技術などを応用して、なにか bio-interactive なパターン回路をナノメーターの解像度で作ってやろうというもの。


(2) Molecularly functionalized surface

基質の表面に、なにか molecular をつないでやって、その molecular の評価系みたいなものをつくろうというはなし。


(3) 量子ドット

量子ドットを、蛍光物質として使う。退色が少なく、鋭い emission spectrum をもつという特長があるらしい。この量子ドットになにか自分の好きな分子をくっつけてやって、イメージングに使う、というもの。いま流行ってるみたい。


(4) 自己組織的に形成される nanotube

疎水性の炭素のしっぽと、親水性のペプチドからなる分子(脂肪みたいな感じかな)を作製する。このペプチド部分は、たとえば、IKVAVという分化を促進するような物質にしてやる。この分子は、ある条件下で自己組織的に集積して、nanotube を形成し、巨視的にはゲル状となる。で、このゲルのなかに projenitor cell を入れて飼ってやると、neuron への分化が促進されるとか。(文献 21)


(5) カーボン・フラーレンをベースとした化合物

Anti-oxidant としての働きをするらしい。


(6) Blood-brain barrier を通過する nanoparticle

drug delivery に使う。

--
量子ドットというのは、最近よく耳にするのですが、僕は何のことか知りませんでした。今日 Wikipedia で調べたら、こんな感じに書いてました:

「主に半導体において、結晶成長や微細加工により電子の持つド・ブロイ波長(数nm~20nm、nmは1x10-9m)の粒状の構造を作ると、電子はその領域に閉じこめられ電子の状態密度は離散化される。閉じ込め方向を1次元にしたものを量子井戸構造、2次元のものを量子細線、そして3次元全ての方向から閉じ込めたものを、量子ドットと呼ぶ。」

ん?3次元すべての方向で電子を閉じこめるって、どういうことじゃろー?このページを読んだ感じでは、つまり結晶のサイズを電子のドブロイ波長程度にすれば、それだけで電子は閉じこめられてしまうみたいね。


簡単に計算してみます。

例えば、半導体材料として一般的な、GaAs (ガリウム砒素) の結晶の場合、1.43 eV 以上のエネルギーを与えると、電子は価電子帯からバンドギャップを飛び越え、伝導バンドへ移動する。で、普通であれば伝導バンドでは、電子のとりうるエネルギーは自由。

ここで、1.43eV での電子のドブロイ波長は、計算してみると、約 1 nm 。もし GaAs の結晶サイズ d が、3次元ともに 1 nm 程度であれば、電子は、伝導バンドでも、波長が d (の整数分の1)に拘束されてしまって、つまりとりうるエネルギーが離散的になる、というわけですね?(間違ってたらすいません。)


つまり、GaAs なり、CdSe なりの半導体の結晶のサイズをナノサイズの大きさにすればそれが量子ドットになるわけで、蛍光物質として使う場合は、結晶が壊れないかぎり退色しないし、発光のスペクトルも鋭くなるわけですね。難しいのは、粒子サイズをそろえること(←粒子サイズによってスペクトルが変わってくるので)と、粒子に自分の好きな有機分子をくっつけることかな?

量子ドットはもともとは、単一電子トランジスタやフォトニクス素子、レーザーなどへの応用に期待がもたれている材料みたいですね。

投稿者 sfujisawa : 23:34 | コメント (0)

2005年12月21日

セミナ

今週、Luthi ラボの Herry 博士という方がうちのラボに見学にきていて、昨日セミナーをしてくれた。内容は、unpredictability(予測不可能性) と amygdala について。Amygdala は、恐怖や不安に関わるが、ここで、「恐怖」と「不安」の違いを、「予測可能」と「予測不可能」の違いであると考える。で、彼は、amygdala は、予測不可能な刺激に対して反応するのではないか、と考え、ラットに「時間間隔が規則正しい音刺激」と「時間間隔がランダムな音刺激」を与えたときの違いを調べたらしい。で、「ランダム」の時は、amygdala で有意に c-Fos 上昇と、発火率上昇(free-moving, field)が見られたとか。つまり、amygdala は、unpredictability そのものに反応するということらしいね。

投稿者 sfujisawa : 23:30 | コメント (0)

2005年12月20日

美術コーナー

えっと、唐突ですが、今日から、美術についての新コーナーを始めてみます。

このコーナーでは、僕なりの絵画の読み解き方を、ちょっと長めの文章で紹介していきます。

今回は、「マルガリータ王女とベラスケス」。(←ちょっと長いので別ページにリンクしてます。)これは、以前、メトロポリタン美術館でベラスケスの絵を見ているときにふと思いついた文章です。お暇なときにでも読んでみてください。

投稿者 sfujisawa : 23:54 | コメント (0)

2005年12月19日

かたづけ

僕は、片付けが苦手である。片付けをはじめても、どーせ散らかるからいーや、とすぐめんどくさくなって飽きてしまう。こんな性格だから、油断するとすぐ部屋は散らかり放題になってしまう。

とくに、薬作にいた頃は、となりの席の馬場くんと机の上のキタナさを競ったものである。積み重ねてある論文のなだれ現象など毎度のことであった。(ただ、馬場くんの机の上には論文に加えて、なぜか海洋堂のフィギュアたちがところせましと転がっていたので、馬場くんのほうが一枚上手だったような気がする。。)

しかし、ブザキ研に来てからは、そこまで汚くはしていない(と思う)。部屋をあんまり散らかすと、きれい好きのエヴァに怒られるので。

ただ、その反動でか、自分の家の中は、えらい散らかっている。泥棒に入られた後でもこんなには散らかってないだろー、っていうぐらい。


さて、先日、大学から家に帰ったとき、留守中に人の入った形跡があった。というのは、トイレの便座のフタを、僕は常に開けておく癖があるのだが、その日はフタが閉じてあったのだ。泥棒かな、とおもったが、泥棒だったらのんびり便所なんか行かないだろう。いちおう大事なものをチェックしたところ、別になくなってはなかった。では誰だろう?大家さんか?大家さんはおじいちゃんで、よくうちの建物まわりの植物の手入れなどをしている。でも勝手に店子の部屋に入るのかな?あるいは単なる自分の気のせいかな?

そうこう考えていると、その数日後、この部屋を借りるときに仲介をしてもらった不動産屋のSさんから、次のようなメールを受けとる;
「大家さんから、部屋を整理するように、と伝言がありました。。」
。。。

しかし、大家さんとはいえ、勝手に人の部屋に入っといて、部屋がきたねーから片付けろー、って言うのは、なんとなく理不尽な気もするが。。(気のせい?)

投稿者 sfujisawa : 22:31 | コメント (0)

2005年12月18日

シーレ展

週末は、ノイエギャラリーのシーレ展へ行ってきた。

ノイエギャラリーは、メトロポリタン美術館のすぐそばにある小さい美術館で、主にドイツ~ウィーンの、分離派・表現主義・バウハウスあたりを収蔵する。展示は少し貴族趣味が入ってて、異常に高い位置に絵が展示されてあったりして見づらかったりもするのだが、コレクション自体のセンスは非常に優れている。

シーレは、表現主義の代表的な画家。1890年生まれー1918年没、享年28歳。(って今の僕の年齢やん!)今回はこのシーレを中心にした展示。とくにデッサンの展示がすばらしかった。

シーレには人物画のデッサンが多いが、その特徴は、
(1)不自然な姿勢
(2)強い輪郭線
(3)ムラの強い彩色

線は、鉛筆で、常に同じ強さで一気に描かれている。そのために、不自然な姿勢であるが故に出てくる特徴的な体の線が、際立って見え、絵に緊張感とダイナミズムを生じさせてる。

このデッサンの上に、彼独特のムラの強い彩色、パッチ的な塗りにより、肌の質感を出している。色彩的には、赤と緑という補色の関係にある色の並置などにより、立体感をだしている。

と、書いてみたものの、なんでこんなにシーレの彩色が理不尽なほど質感をもっているのか、じつのところ僕には論理的にうまく説明できない。ちょちょ、っと色を付けるだけであり得ないぐらい絵がイキイキとしてくるのである。ほとんど魔法だね。


Schiele1.jpgSchiele2.jpgSchiele3.jpg

▲ 左から、Mother and Child (1910)、Kneling Semi-nude (1917)、Friendship (1913)

投稿者 sfujisawa : 22:46 | コメント (4)

ウッドベリー

あと、モールにも行ってきました。

最近、あまりにも寒くて、日本から持ってきた薄いジャケットだけでは凍えるようになってきた。それで、ふかふかのダウンジャケットを買うべく、ウットベリー・コモン・アウトレットというショッピングモールに行ってみる。

そういえば、今から2年前の夏頃だったかな、当時僕は東京で、がや先生はNYにいたとき、国際電話で30分ほど研究のディスカッションをしたことがあったのだが、そのときがや先生が、「これからウッドベリーに行ってくるー」、って話してたので、そのときにウッドベリー・コモンの名を知った。NYに近い格安モールということで、じつは日本人にも有名らしい。

ウットベリー・コモンは、うちから北に車で40分ぐらい行ったところ。巨大なアウトレットモールで、クリスマス前ということもあってにぎわってました。今回は、Timberland(適当に入った店)でダウンジャケットを購入。$175 → $110 だから、まあ、安くなっているのかな。

投稿者 sfujisawa : 22:44 | コメント (0)

2005年12月16日

Science 12/16

今日は午後から、うちの学科で Holiday party なるものがあった。(でも僕は作業が終わらなくて出れなかった。。)ということは、一般的には、明日からがクリスマス休暇なのかな?

Long-Term Modulation of Electrical Synapses in the Mammalian Thalamus

Carole E. Landisman and Barry W. Connors

Electrical synapse でも、mGluR 経由で、長期減弱が起こるらしい。。
系は、ラット、thalamocortical slice 、thalamo-reticular neuron (Interneuron) のパッチクランプ。

投稿者 sfujisawa : 22:48 | コメント (0)

2005年12月14日

Lisman のトーク

今日はうちのセンターのセミナーで、John Lisman のトーク。前半は、LTPにおけるシナプスメカニズムの話で、後半は記憶におけるドーパミン系の役割の話。後半の話は、半年前ぐらいに出てた Neuron の review 論文(Anthony Grace と共著)に沿った内容。ドーパミン(以下、DA)というと報酬系の話が多いが、この論文ではドーパミン系の novelty-dependent activity に焦点を当てている。

ラットを新規環境に入れる、などの刺激により、VTAのドーパミンニューロンが活性化され、これにより海馬へのドーパミン放出量が増加し、そのドーパミンが海馬のシナプス増強に影響を与えるらしい。これより、海馬 →・・・→ VTA → 海馬 というループ(論文のFig 5)が、新規情報の長期記憶形成に重要なのではないか、という仮説が考えられる、という話。

ストーリーを簡単にまとめると、こんな感じ;

(0) Anatomy。
ドーパミン系の主要な投射元は、中脳黒質(Substantial Nigra)と中脳腹側被蓋野(VTA)。主な投射先は、大脳基底核の側座核(accumbens)、線条体、および Prefrontal cortex など。海馬にも投射がある。

(1) novelty-dependent DA release in 側座核 (Legault & Wise 2001 EJN)
ラットを新規環境に入れると、側座核での DA release の増加(microdialysis で測定)。この DA release は、海馬 subiculum への TTX 適用で抑制される。つまり、海馬 dependent な現象。

(2) novelty-dependent DA release in 海馬(Ihalainen et al 1999 Neurosci lett)
ラットを新規環境に入れると、海馬での DA release の増加(microdialysis、HPLC で測定)。

(3) 海馬 → 側座核 の glu 投射が、 VTA の DA neuron の活動を活性化させる。(Grace AA 2001 JNS)

つまり、

 海馬 subiculum →glu 側座核 →・・→ VTA →DA 海馬
 海馬 subiculum →glu 側座核 →・・→ VTA →DA 側座核

の経路で、novelty-dependent な、海馬(&側座核)でのドーパミン放出がある。

で、このドーパミンが何をするかというと;

(4) 海馬スライス系において、Late-phase LTP は、D1 レセプター依存である。

(5) Novelty-dependent enhancement of LTP (Rowan MJ 2003 NN)
テタヌス刺激を、ラットが新規環境下にいるときに与えると、CA1 での LTP は増大する
(free-moving rat での field 記録実験)。これは、D1/D5 レセプター依存。

(6) Late-phase LTP において、DA は local protein synthesis を増強する働きを持つ(海馬分散培養系)。(Erin Schuman 2005 Neuron)

というわけで、このドーパミンは、シナプス可塑性の late-phase に効いてくる、という流れ。

ただ、このストーリー自体は、Lisman 色よりも、むしろ Grace 色のほうが強い感じがするかな。最近 Grace が、DA系と絡めた PFC-海馬 interaction の研究を力を入れてやっているのはこのストーリーとの絡みを考えているのでしょうね。

投稿者 sfujisawa : 22:54 | コメント (2)

2005年12月13日

野生型

以前紹介したネズミ捕り、これ、ふつうにラボに出現するマウスを捕まえるの使う目的みたい。

昨日、パスカルが机の上に、パンケーキのかけらを囮の餌にしてあのねずみ取りを仕掛けていたのだが、今日朝来てみると、パンケーキを取られて、しかも糞だけを残して立ち去られていた。。さすが野生型、かしこい。

投稿者 sfujisawa : 23:41 | コメント (0)

2005年12月12日

Neuron 12/8

メモ。

Epileptogenic Actions of GABA and Fast Oscillations in the Developing Hippocampus
Ilgam Khalilov, Michel Le Van Quyen, Henri Gozlan, and Yehezkel Ben-Ari

ベン・アリ研。ラット、スライス系の電気生理。幼年期のGABAは興奮性に働くことが知られているが、この興奮性のGABA系が、幼年期の epileptogenesis に関わっている、という話。


Internal Dynamics Determine the Cortical Response to Thalamic Stimulation
Jason N. MacLean, Brendon O. Watson, Gloster B. Aaron, and Rafael Yuste

ユステ研。Thalamus 付きの cortex スライスでの、カルシウムイメージ実験。Cortex において、自発的な活動(UP/DOWN)と、thalamusを刺激したときに生じる活動の類似性を議論した論文。


Active Maintenance of Associative Mnemonic Signal in Monkey Inferior Temporal Cortex
Masaki Takeda, Yuji Naya, Ryoko Fujimichi, Daigo Takeuchi, and Yasushi Miyashita

宮下研。これはちょうど、今年のSfNで発表されてたやつですね。ちょうどその場にいらした納家先生に解説していただきました。


Two Cortical Systems for Reaching in Central and Peripheral Vision
Jerome Prado, Simon Clavagnier, Helene Otzenberger, Christian Scheiber, Henry Kennedy, and Marie-Therese Perenin

投稿者 sfujisawa : 22:42 | コメント (2)

2005年12月11日

パーティー

金曜は、夜からカムラン(ラボの assistant prof)の自宅で、カムランの誕生日パーティを開催してたので、僕も参加させてもらう。毎年恒例のパーティーみたい。カムランは、マンハッタンに住んでいる。マンハッタンは一人で住むには高いので、2人でシェアして住んでいるとか。たしかに、マンハッタンからうちの大学まで電車で20~30分ほどで通勤できるし、それならいっそマンハッタンに住むっていうのも、けっこう良い選択肢ではあるよね。

で、パーティーはにぎやかなもので、カムランの部屋に、彼の友人が30人ほど集まって飲みまくる、というかんじ。途中、ギューリーも奥さんと一緒に蝶ネクタイ姿(!)で顔を出してました。僕は12時ぐらいで、撤退したのだが、まだほとんどの人が残ってた。いったい彼らは何時まで飲んだのだろう。。

投稿者 sfujisawa : 23:56 | コメント (0)

チェルシー

週末は、またぶらぶらとマンハッタンへ絵を見に行く。今回は、チェルシーでギャラリー巡り。チェルシーとは、Penn station の南あたりの地区のこと。チェルシーの 22nd~24th Street のあたりはギャラリーが集中しており、通りの両側がすべてギャラリー。しかも、見るだけなら基本的に無料。日本のギャラリーはひやかしでは入りにくいのだが、マンハッタンのギャラリーは観光客でけっこうにぎわっており、とても中に入りやすい感じ。扱っているのはだいたい現代作家の作品が多く、玉石混交といった感じで面白い。

いちばん良かったのは、Matthew Marks GalleryRoni Horn 展かな。これは他のギャラリーと比べて少しレベルが高かった。Roni Horn は、僕は初めて見た名前だったが、もうすでにけっこう名の通った現代作家らしい。ある、空間的・時間的に連続的な広がりをもつ「何か」を、あえて分割・静止・再構成して提示することにより、その「何か」の連続性や広がりをかえって強く感じさせる、そういう内容の作品。

あと、Gagosian Gallery の全く意味の分からないビデオ展示も面白かった。とにかく派手でやかましくて、あんまり深くない。でも面白かった。

あと、Luhring Augustine Gallery の チェス展もおもしろかったかな。

kusama.jpg
▲ 草間弥生の「チェス・セット」(2003)

ついでに、メトロポリタン美術館にも行って、アンジェリコ展ゴッホ素描展を見てくる。

フラ・アンジェリコは15世紀、初期ルネッサンスの画家。ルネッサンスはまとめて見る機会がなかなかないので、こういう企画展示は勉強になる。初期から成熟期までの作品が多かったので、空間構成や表情、ダイナミクスさが、時代を追うごとにどんどん良くなっていき、画家の成長が見て取れて面白かった。でも、「受胎告知」などの代表作は来ていなかったので残念。

ゴッホ素描展は、素描だけなのでそれほど期待してなかったが、初期作品からアルル時代、サン・レミ時代、オーヴェール時代のそれぞれの作品をしっかり集めていて、思ってたのよりかなり良い展示だった。例えば、初期作品では、鉛筆で、一本の草、一個のレンガまでも、細かく細かく徹底的に書き込んで、濃密なデッサンを行っている。一方、アルル時代では、茶色ペンを使って、線のストロークをやや長めにして、初期時代より線を省略して、しかし、濃密さは損なっていないデッサンを行っている。(おそらく、油彩に仕上げることを意識したデッサン。)いずれにしても、デッサンの段階で本気で試行錯誤して取り組んでいるのが分かる絵で、ゾクッとさせられる展示でありました。

投稿者 sfujisawa : 23:56 | コメント (4)

2005年12月09日

大雪

今日は、朝から大雪。20cm以上積もってた。ガレージに置いてある車は雪に埋もれて、悲しい状態に。雪かき道具を何も持っていない上に、手袋すら持っていないので、素手で雪かきして、公道まで車を出す。

どうも、早朝から急速に降り始めた雪みたいで、公道も高速道路もまだ完全に除雪されておらず、みんな超ノロノロ運転。いつもは大学まで20分で着くところが、一時間半もかかってしまった。大学の駐車場も、停まっている車はいつもの1/3ぐらいで、どうやらみんなこの雪で萎えてしまったらしい。

それにしても、ニュージャージーって、こんなに豪雪地帯だったんだ。今週だけでもう、2~3回雪が積もってる。これは、雪かきスコップが必要だなぁ。

yuki.jpg

投稿者 sfujisawa : 19:32 | コメント (4)

2005年12月07日

JNS 12/7

メモ。

Recognition of Familiar Individuals in Golden Hamsters: A New Method and Functional Neuroanatomy
Wen-Sung Lai, Leora-Leigh R. Ramiro, Helena A. Yu, and Robert E. Johnston

ハムスターを用いた social memory の論文。動物(rodent)の個体識別において、相手のことを知っている(familiar)かどうかの記憶だけでなく、相手の性質までも記憶しているかどうかを評価する系を考えた、という論文。

被験者ハムスターは、experience phase において、2匹のハムスター(ハムスターAとハムスターBとする)とそれぞれ面会する。面会の仕方は、ハムスターAとは、金網を隔てて穏やかに面会させる。ハムスターBとは、戦わせる。(ハムスターBは敢えて喧嘩の強い奴を選んでいるので、被験者ハムスターは、ハムスターBには負ける。)

test phase では、被験者ハムスターは、Y-maze を行う。ここで、Y-maze のうちの一本のアームに、ハムスターA、あるいは、ハムスターBがいる。で、被験者ハムスターが、その他人ハムスターのいるアームをどれだけ避けるか、で評価。被験者ハムスターは、ハムスターBがいるばあい、そのアームを有意に避ける、という結果。

あと、c-Fos 実験や、局麻実験など。海馬依存らしい。

Materials&Methodsを読むかぎり、評価系にはあまり洗練されてない部分も多くあるように感じたが、でもまあ面白い論文かな。

ところで、この論文で参照してあった、この論文が面白かった。羊も(羊の)顔認識ができるらしい。しかも、50匹分の羊の顔写真を識別できて、それを2年以上も記憶しているとか。。


Motor Memory Consolidation in Sleep Shapes More Effective Neuronal Representations
Stefan Fischer, Matthias F. Nitschke, Uwe H. Melchert, Christian Erdmann, and Jan Born


Competitive Stimulus Interactions within Single Response Fields of Superior Colliculus Neurons
Xiaobing Li and Michele A. Basso


Neuronal Sensitivity to Microsecond Time Disparities in the Electrosensory System of Gymnarchus niloticus
Atsuko Matsushita and Masashi Kawasaki

投稿者 sfujisawa : 22:03 | コメント (0)

2005年12月04日

PS1

今日朝、起きて外に出てみると、雪が積もってた。15cmぐらい。初雪ですよ。駐車場(屋根なし)においてある車が雪をかぶって埋もれていた。雪かきして車を取り出すがめんどくさかったので、バスでマンハッタンの美術館にでも行くことにする。

今日は、Queens にある「PS1現代美術館」に行ってみる。ホイットニー美術館は、既に評価の固まっている現代作家の展示を行うのに対し、PS1はまだ評価の固まっていない現代作家の展示を行う。

現代美術の楽しみのひとつは、自分の想定外の度肝を抜かれるような作品に出会える可能性がある、ということ。逆に、評価が固まってないぶん、ハズレも多い。

で、PS1は今回始めていったみたのだが、期待していたのよりもかなり良かった。作家も才能ある人が多かったし、キュレーションもしっかりしてた。トイレにまでビデオ作品を設置するこだわり様。これは常連になりそうな感じ。

展示も多種多彩で飽きなかった。以下、面白かった展示。

Woman of Many Faces: Isabelle Huppert

Isabelle Huppert というのは、フランスの有名な女優(らしい)。写真展示というと、普通はひとりの写真家が撮った写真を並べるが、この展示では、被写体のほうが Isabelle Huppert ひとりで、写真家は複数、というもの。Isabelle Huppert というひとりの女性を、複数の写真家の目から切り出して、その内面を浮かび上がらせようという企画。100枚以上の中~大型の写真が展示室に飾られていてけっこう圧巻。この展示では、Isabelle Huppert は、油断のない、女優としての顔として写真に写っている。写真家との間に緊張感のある距離を保ったまま、しかし、被写体の内面の何かを描き出そうとしている、というところが実に面白かった。

Jon Kessler:The Palace at 4 A.M.

展示室には怪しげな機械仕掛けの人形やら、自走式のビデオカメラやら、テレビなどが大量に設置してある。ビデオカメラたちは、ぐるぐる回りながらその機械仕掛けの人形などを収録し、テレビがそれをリアルタイムで映し出す、という作品。こう文章にしてみると何が面白いのか全く伝わらないと思うが、しかしこの展示はすばらしかった。圧倒的。そのうち日本でも展示があるかもですね。

  *    *    *

さて、帰りはバスを間違えて大変だった。いつもと同じバスに乗ったつもりなのだが、バスは、わが町 Fort Lee を通過して、ハイウェイに乗って、内陸部の方へ突っ走っていく。これはやばいと思って、途中で下車したものの、下車した場所はけっこう郊外の閑散としたところ。Fort Lee 行きのバス停を見つけるのに、20分ほど雪道を歩くはめになった。寒かったー。。(いろんな意味で)

ps1.jpg

▲ PS1現代美術館。小学校の校舎を改築したもので、けっこう趣がある。

投稿者 sfujisawa : 23:09 | コメント (1)

2005年12月01日

Nature Neurosci 12月号 (2)

メモ。つづき。

Neuronal correlates of subjective sensory experience

Victor de Lafuente & Ranulfo Romo

Romo。例によって、サルの手に振動刺激をあたえる実験。今回は、振動刺激の強さを、感じるか感じないかの閾値付近でランダムに変化させる、というもの。サルは、刺激を感じたら「Yes」ボタンを、感じなかったら「No」ボタンを押す、という課題。記録は、Primary somatosensory cortex (S1) と、medial premoter cortex (MPC) から。刺激の閾値付近では、MPC のニューロンの発火はサルの回答とよく相関しているが、S1 ニューロンの発火はサルの回答と相関していない、という結果。で、MPCは、主観的な感覚経験をコードしている、というのが彼らの主張。



Cognitive control mechanisms resolve conflict through cortical amplification of task-relevant information

Tobias Egner & Joy Hirsch

ヒト、fMRI。Attention は、taskに関連する情報を増幅すべく働くのか、taskに関係しない情報を抑制すべく働くのか、あるいはその両方なのか、ということに焦点をあてた論文。課題は、改変型 Stroop task。ある著名人(政治家 or 俳優)の顔写真の上に、別の著名人(政治家 or 俳優)の名前が文字で書かれた画像を見て、俳優か政治家かを選ぶ課題。(たとえば、ロバート・デニーロの顔写真の上に、「毛沢東」と文字が大きく書かれた画像。)顔写真から俳優か政治家を選ぶ課題と、文字から選ぶ課題の両方を行う。

このとき、fusiform face area (FFA) での BOLD 信号を測定。FFA は face processing に関係するといわれている領域らしい。

結果は、FFAでは、顔写真から選ぶ課題の時、顔写真と文字の属性が違う場合(政治家+俳優 or 俳優+政治家)は、属性が同じ場合(政治家+政治家 or 俳優+俳優)よりも、活動が上昇する。

一方、文字から選ぶ課題の時(つまり顔写真は distractor)、顔写真と文字の属性が違う場合は、属性が同じ場合よりも、活動が減少しない

つまり、Attention は、taskに関連する情報を増幅すべく働く、という結論。

投稿者 sfujisawa : 20:29 | コメント (3)