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2005年12月31日

今年行った展覧会

今年行った展覧会 ベスト3

1位 東京国立西洋美術館 ラ・トゥール展 ☆☆☆
   企画:高橋明也(国立西洋美術館主任研究官)

ジョルジュ・ラ・トゥールは17世紀のフランスの画家。現在、真作は40点程しか残ってないのだが、この展覧会ではそのうち 20点近くを集めて来ていた。これは驚異的な数。どこの美術館でもラ・トゥールは目玉だから、貸してもらうのには相当苦労したであろう。

展示も良かった。初期の作品(「キリストと十二使徒」など)から、成熟期の作品までバランス良く配されていた。とくに、初期は古典主義的でがっちりとした絵を描いていたのが、成熟期に行くにしたがって、炎の光を効果的に用いた神秘的・幻想的な絵へと変化していく様子がじっくりと追えて良かった。

それで、今回のキュレーションで特に素晴らしかったのは、その初期作品と成熟期作品の展示室の間に、ラ・トゥールと同時代のフランスの画家、ジャック・カロの戦争画の版画を一枚展示していたところである。

おそらく、キュレーターの言わんとするところは、こうである:「ラ・トゥールやカロの生きた時代は、このような戦乱が暗い影を落としていた時代でもあった。カロは、その現実を直視して、諧謔を交えた版画を作製した。一方、ラ・トゥールは厳密な写実による性格描画から幻想的な描写へと変化していった。この「現実と幻想」という対比に注意して、ラ・トゥールを鑑賞してみてください。」

一枚こういう絵を置くことで、展示に深み(奥行き)が出てくる。さすが、と思わせるキュレーションでありました。

ところで、このページに企画者の高橋明也のインタビューが載ってて面白いです。『聖トマス』購入時の話とかも載ってます。


1位 東京国立近代美術館 『痕跡』展   ☆☆☆
   企画:尾崎信一郎(京都国立近代美術館主任研究官)

タイトルだけからは何の展覧会なのかさっぱり分からなかったので、あまり期待しないで見に行ったのだが、予想に反して素晴らしい展示であった。アンフォルメル~抽象表現主義以降の現代美術の流れを、「痕跡」という観点からとらえ直そう、という企画展示。目からウロコ、というか、あまりにも素晴らしくて、1ヶ月ぐらいショックを引きずってしまった。これについてはまたそのうち丁寧に書くと思います。


ベスト3といいつつ2つで終わってしまいましたが、その他の展覧会:

東京国立近代美術館 ゴッホ展     ☆
東京都現代美術館 イサム・ノグチ展
メトロポリタン美術館 常設展      ☆☆
メトロポリタン美術館 マティス展     ☆
メトロポリタン美術館 アンジェリコ展   ☆
メトロポリタン美術館 ゴッホ素描展    ☆
ワシントンナショナルギャラリー 常設展 ☆☆
MoMA セザンヌとピサロ展
MoMA 常設展               ☆
ホイットニー美術館 常設展        ☆
ノイエ美術館 シーレ展           ☆☆
PS1現代美術館               ☆☆


今年はバタバタしてたから、あんまり展覧会の数をこなせなかったですね。それにしても、横浜トリエンナーレは行きたかったなぁ。行った人がいたらまた感想を聞かせてください。

投稿者 sfujisawa : 2005年12月31日 20:07

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