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2006年01月27日

モーツァルト

今日はモーツァルト生誕250周年の日。というわけで、カーネギーホールは今日はオール・モーツァルト・プログラム。しかもラトル&ベルリンフィルという、最高に贅沢なこの演奏会を、聴きに行ってきました。(もっとも僕は今日が生誕250年記念だというのを今日知ったのだが。。)曲目は、セレナード第10番「グラン・パルティータ」、ブレンデルのピアノ協奏曲第27番、および交響曲第38番「プラハ」。モーツァルトは僕は普段はあまり聴かないのであまり耳が慣れていなかったが、今日の演奏にはさすがに感動した。とくにセレナード。管の響きのふくらみと厚さ、音のまぐわう感じがまことに素晴らしかった。プラハも圧倒的。モーツァルトでこんなに感動したのははじめてかも。よくよく見てみると選曲もこだわってますね。プラハがどちらかというと弦中心の編成だから、グラン・パルティータで BPO の管を聴かせたかったんだろうね。室内楽曲的なところもラトルのハマリだったような気がする。

投稿者 sfujisawa : 23:48 | コメント (0)

2006年01月24日

セミナ

今日のラボセミナーは、ブザキラボへのポスドク候補生のトーク。ペンシルバニア大の Contreras ラボの学生の人。すごい人の良さそうな感じの人でした。ジョン・ケリーを若くしておとなしくしたような感じのひと。トークの内容は、Voltage sensitive dye による somatosensory cortex の in vivo イメージングネタで、投稿中のものらしい。なかなかきれいなデータでした。

投稿者 sfujisawa : 23:43 | コメント (0)

2006年01月22日

図書館

今日、Fort Lee の市立図書館に行ってみる。家から歩いて2分ぐらいのとこ。ネットで調べてその存在は知っていたし、そもそも家から見えるぐらい近いのだが、実際に行くのは初めて。免許書を見せると、即、会員証をタダで作ってくれた。

この図書館、クラシックのCDのコレクションがあり、それが目当て。今週末のカーネギーホールのコンサート(ラトルのモーツアルト)の予習用。量的には、ちょうど東京にいた頃によく使ってた文京区の真砂図書館と同じぐらいかな。もちろん、CD以外にもいろいろと本は置いてある。なぜか日本語の本のコーナーも少しあり、手塚治虫の「ブッダ」なども置いてあったので懐かしくてつい立ち読みしてしまった。なかなかいい図書館です。

投稿者 sfujisawa : 23:24 | コメント (0)

2006年01月20日

JNS 1/19

Spike Count Reliability and the Poisson Hypothesis
Asohan Amarasingham, Ting-Li Chen, Stuart Geman, Matthew T. Harrison, and David L. Sheinberg

First author のアソハンは、今はうちのラボのポスドクで、実は席が僕のとなり。数学出身で、専門は確率統計みたいです。僕は統計数理は苦手なので普段はこの手の論文はパスなのですが、pooneil さんのとこでも紹介されてますし、何より席がとなりなのでこの論文はさすがに読まないとまずいですね。。(笑)

ストーリーを要約すると、

(1) ニューロン発火のスパイク列は、統計的に分散が大きいので、Poisson process ではないかと考えられていた。
(2) しかし、今までの統計方法では、分散を大きく見積もりすぎている。
(3) そこで、Poisson 過程であるかどうかを判定する新しい統計手法を開発した。
(4) この統計手法で、実際のサル電気生理から得られたスパイク列のデータを解析すると、Poisson 過程よりも reliable なものであることが分かった

という内容。

では、まず Poisson 分布について。

たとえば、あるニューロンの発火について考えてみます。

ある短い time bin ΔT(例えば 1ms)で、ニューロンが発火する確率 pΔT は非常に小さい(例えば pΔT = 0.002)が、観測時間 n×ΔT が長い(例えば n = 1000)と、期待値 p×n はあるそこそこの値をもつ。(ここでは p×n=0.002×1000=2、つまり 2 Hz)。このニューロンの発火を観測した場合に、観測された発火数 が例えば 3 である確率は、pΔT が一定とするならば二項分布に従うので、
1000C3 0.0023(1-0.002)997。この計算を直接実行するのは大変である。しかし、p が非常に小さく、n が非常に大きい場合、観測される発火数 m の確率を求めるのには以下の定理が使える(ポアソンの小数の法則);

 nCm pm(1-p)n-m eλm/m!

ここでλは期待値(λ=np)。これが Poisson 分布で、つまり Poisson 分布は二項分布の n → ∞、p → 0 の極限での分布のこと。(また、λを大きくしていくと、ポアソン分布は正規分布に近づく。)

この式から上の確率を求めると、λ=2,m=3より、eλm/m!=0.18。

(以上の話は「統計学入門」(東大出版会)より改変)。

ポイントは、微小 time bin ΔT における発火確率 pΔT が、常に一定であるというのが、Poisson 分布を持つための必要条件である。

ところで、現実のニューロンでは、pΔT は、長い時間のスケールで見ると、一定でないように見える。ある event があれば発火率は上昇するだろうし、何もなければ発火率は減少するかもしれない。つまり、発火率 λ は時間によって変化する(すなわち、λ=λ(t)、pΔT = pΔT(t) )。ただし、λや pΔT が大きなスケール時間的に変動しても、局所的(比較的短い時間スケール)でみれば、 pΔT は、すべての time bin に対して等価である、としたのが、inhomogenous Poisson process 。(このへんの話は、Shadlen & Newsome 1999 のあたりで提案された話らしいのですが、僕はあの有名論文、難解なためにいつも途中で挫折してしまっていまだ理解できておりません。。)

つまり、Poisson Process でない、ということは、局所的に見ても、pΔT は、すべての time bin に対して等価でないということであります。

    *         *         *

ここで、本題に入る前に、以後使用する記号をまとめておきます:
 i 番目の trial で観測された発火率      mi
 n 回の trial で観測された発火率の平均  μ'= (1/n)Σmi
 n 回の trial で観測された発火率の分散  σ'2
 真の発火率(発火率の期待値)         λ
 真の分散                      σ2
(真の値は unknown なので、観測によって得られた値で代用する、ということです)

さて、ニューロンの spike train が Poisson process に従う、という根拠は、「trial毎の発火率の分散が大きい」という実験事実があるためです。

Poisson 分布では、その数学的性質上、期待値と分散は等しくなります。つまり、Poisson 分布では、Fano factor = σ2/λ = 1。

Shadlen 論文での主張は、観測によって得られた Fano Factor(σ'2/μ' )が 1~1.5 になるので、spike train が Poisson prcess であるとの仮説が成り立つのではないか、というものです。

それで、ここからが本題になるのですが、以上の Shadlen 論文の主張に異議を述べたのが、本論文です。

このような spike 列の統計的な処理を行うときには、「trial毎の観測の揺らぎは存在しない(trail-to-trial statistical stationarity)」という暗黙の仮定をおいています。

つまり、観測による trial毎の揺らぎを考慮していません。しかし、もし、trial毎に揺らいでいるのであれば、Fanofactor(=分散/平均)が大きい値を持つのは当然、ということになります。

ここで「観測の揺らぎ」と言っているのは、観測自体に内包しているしているような揺らぎのことです。さいころを振るような trial の場合は、tiral毎の観測の揺らぎはないと考えられます。しかし、サルの電気生理のような場合、trail毎の条件が同じであったとしても、サルの集中力や疲れなどの hidden な条件によって揺らぎが生じるので、trail毎の観測の揺らぎが乗ってしまう可能性があります。

つまり、trial毎に揺らぎが考えられる観測では、単に σ'2/μ' が 1~1.5 になるからといってそれが Poisson Process であることの主張とするには根拠が弱い、という主張です。(なぜならσ'にはニューロン発火の純粋な揺らぎ(真の分散)に加えて、サルの集中力といった観測の揺らぎといういらないものが入ってしまうから。)

それで、trail 毎に揺らぎがある場合でも Poisson Process であるかどうかを判定する方法を提案したのが、本論文なわけです。

ではどうやるか。

この論文での戦略として、帰無仮説を立ててそれを棄却できるかどうかで判定するという手法を用います。

帰無仮説(null hypothesis)H0

 m1, m2, ・・・, mn
 は独立な Poisson random value である

で、この帰無仮説を棄却できれば、Poisson 過程ではないと言える。(棄却できなければ Poisson 過程であるともないとも言えない)。

で、その判定として、以下の不等式を用いる;

 Σ mi2 ≦ f (論文中の式(2))

つまり、帰無仮説を棄却できる値 f を見つけることができれば、統計的に Poisson 過程でないかどうかの判定が可能になる、というわけです。それで、この値 f を数学的に見つけてやろう、というのがこの論文の前半での主題。

f は、trail回数 n、観測平均 μ'、および棄却のレベル(どれくらいの確率で棄却できるかということ)αの関数になると考えられる。すなわち、f = f(n,α,μ')。

それで、結局、論文中の式(10)によって f を求めることができる、というのが本論文での結果です。

(式(10)の導出方法の詳細は省略しますが、Trial-to-trial statonarity を仮定した場合との統計的な比較によるみたいです。 )

数値的には、モンテカルロシミュレーションを使って、f を求めるみたいです。

一応、ホームページに f を求める Matlab プログラムを置いているみたいなので、そのプログラムを使えば、自分のデータを試してみることも可能です。

以上の話をまとめると、
(0) 今までは、Poisson process かどうかの判定に、Fano factor(分散/平均)が~1であるかどうかを使っていた。
(1) しかし、Trial-to-trial に揺らぎ(観測に依る揺らぎ)がある場合は、Fano factor が真の値より大きくなってしまうという不都合がある。
(2) それで、新しい統計手法を開発した。ついでに、簡単に使えるようプログラム化した。
ということです。

それで、論文の後半では、実際のサル電気生理での spike 列のデータを使って、Poisson 過程であるか否かを解析しています。結果を簡単にいうと、stimulus onset から400msぐらいまでの区間(発火率が比較的高い区間)では、スパイク列は Poission 過程ではない、(Poisson よりもっと規則正しい)ことが統計的に示されています(Figure4b)。Stim onset から 500 ms以上離れてくると、Poisson 過程でないと言えなくなってきます(帰無仮説が棄却されないため)。

    *         *         *

さて、(上で述べたことを繰り返しますが、)Poisson Process でない、ということは、局所的に見ても、pΔT は、すべての time bin に対して等価でないということです。

端的に言えば 、ニューロンには、refractory effect(1回発火した直後にはすぐ(~2ms)には発火できない特性)や burst などの biophysical な特性があるが、発火率が上昇すれば上昇するほど、そういう特性に支配されて、ランダム性(Poisson 性)が減少していく。まあ、当たり前といえば当たり前の話ですが、統計数理的に、どのレベルで Poisson 的であるかそうでないかを議論したのが、この論文の新規性ということでしょう。

投稿者 sfujisawa : 19:42 | コメント (2)

2006年01月18日

セミナ

今日はセンターのセミナーがあり、Brown Univ の Barry Connors のトークで、gap junction のはなし。とくに、neocortex および thalamus での Interneuron の gap junction とその生理学的な働きについて。レビュー的な内容でしたが、局所回路における interneuron の働きには興味があるので、けっこう勉強になりました。そのうちまとめるかもです。

投稿者 sfujisawa : 23:52 | コメント (0)

2006年01月17日

セミナ

今日のラボセミナーは、NYUからいらした西山先生のトークで、synapse-timing dependent plasticity(STDP)の話。まだpublishing前らしいのであまり詳しいことは書けないですが、スライスのネットワーク上で生じさせたSTDP(LTD)ではさまざまな Internereouron が絡んで複雑なmodulationをかけている、という内容。面白かったです。

投稿者 sfujisawa : 23:31 | コメント (0)

2006年01月12日

JNS 1/12

Head Direction Cell Representations Maintain Internal Coherence during Conflicting Proximal and Distal Cue Rotations: Comparison with Hippocampal Place Cells
D. Yoganarasimha, Xintian Yu, and James J. Knierim

Knierim ラボ。ラット、head direcion cell(thalamus からのユニット記録)。

Head derection cell の発火は Local cue によるか Distal cue によるか、について調べた論文(このエントリ参考)で、Knierim お得意の、Distal cue を 時計回りに回転させ、 Local cue を反時計回りに回転させ、place field がどっちに回転するかで調べる手法。

で結果は、ほとんど(94%)の dead derection cell の head direction field が、時計回りの方向に回転した。つまり、thalamus の Head direction cell は、distal cue によってその head direction field を形成している、という話。この内容、2年前の SfN で見かけた記憶がある。


The Continuous Wagon Wheel Illusion Is Associated with Changes in Electroencephalogram Power at ~13 Hz

Rufin VanRullen, Leila Reddy, and Christof Koch

Koch ラボ。高速で回転しているタイヤを見ていると、回転している方向とは逆の方向に回転しているように見えることがある。これを「Wagon wheel illusion」と呼ぶらしい。
ビデオの映像(例えば車のコマーシャルとかかな)で Wagon wheel illusion を生じる場合は、ビデオの sampling rate が wheel の回転周波数とほんの少しずれることによって説明できるが、この現象は、ビデオではない現実の視覚でも生じる(例えば独楽を見ているときなどかな)。この wagon wheel illusion は、wheelが 10~15 Hzで回転しているときに生じるらしい。で、このメカニズムは今のところ分かっていないらしい。

今回の論文では、被験者が、wagon wheel illusion を感じているときに脳波を測定したところ、~13 Hz 成分(α波成分)の減少が観察された、というもの。それで、この周波数の脳波が、wheel rotation の知覚に関係している、という話。Illusion を感じるときの wheel の回転周波数と脳波の周波数が一致しているのが、偶然なのか何か意味があるのかは分からない。


Tactile Spatial Attention Enhances Gamma-Band Activity in Somatosensory Cortex and Reduces Low-Frequency Activity in Parieto-Occipital Areas

Markus Bauer, Robert Oostenveld, Maarten Peeters, and Pascal Fries

Fries ラボ。

投稿者 sfujisawa : 21:49 | コメント (2)

2006年01月10日

lab meeting

今日は lab meeting で journal club。今日は僕の当番で、今月号の Neuron の Joszef Csicsvari の論文をやった。僕の当番であることが4日前ぐらい前に決まったのでやや準備不足だったが、うちのセミナではいつも自然に議論が盛り上がってくれるので、なんとか乗り切ったかな。まあそれにしても、まだ英語で発表・議論するのはいまだに全く上達しないなぁ。。

投稿者 sfujisawa : 23:25 | コメント (0)

2006年01月05日

Neuron 1/4

Place-Selective Firing of CA1 Pyramidal Cells during Sharp Wave/Ripple Network Patterns in Exploratory Behavior
Joseph O'Neill, Timothy Senior, and Jozsef Csicsvari

Csicsvari ラボ("チチバリー"と読むらしい)。海馬で Sharp Wave/Ripple が発生するのは、ラットが静止しているときか、NREM睡眠中。ラット歩行時は、Theta 波が発生する。この論文では、SPW/Ripple が、ラット歩行時にも発生する(つまり、theta 波と同時に出現したりする)という現象を発見した、というもの。しかも、この ripple 中での pyramidal cell の発火も、place-selectivity がある、という内容。まあ、ブザキラボとしては ripple が memory consolidation に関わっているのではないかという漠然とした仮説を持っているわけで、睡眠/静止時だけではなく歩行時にも ripple が発生するという現象は、興味深いわけです。

ところで、Jozsef Csicsvari は、ブザキラボの出身。はじさんとか Ken Harris と同じぐらいの世代('98~'02ぐらいを中心にブザキラボのポスドクだった世代)。この世代の人たちは優秀で、はじさんもケンもジョゼフも、みんなまだ若いのすでに独立して自分のラボもっているのだから、スゴいものである。


Shunting Inhibition Improves Robustness of Gamma Oscillations in Hippocampal Interneuron Networks by Homogenizing Firing Rates
Imre Vida, Marlene Bartos, and Peter Jonas

Threshold Behavior in the Initiation of Hippocampal Population Bursts
Liset Menendez de la Prida, Gilles Huberfeld, Ivan Cohen, and Richard Miles

Enhancement of Spike-Timing Precision by Autaptic Transmission in Neocortical Inhibitory Interneurons
Alberto Bacci and John R. Huguenard

Predictive Neural Coding of Reward Preference Involves Dissociable Responses in Human Ventral Midbrain and Ventral Striatum

John P. O'Doherty, Tony W. Buchanan, Ben Seymour, and Raymond J. Dolan

投稿者 sfujisawa : 21:26 | コメント (0)

2006年01月02日

仕事始め

アメリカは1月2日が仕事始めー、と思って張りきってラボへいったら、どうも今年は1月1日が日曜だったから今日は代休だったらしい。。でもまあちらほらと人は来てた。

今日は装置の修理など。僕が最近作ってみんなに使ってもらっている車輪回転数測定器が、エヴァの実験中に破壊してしまったので、その修理に奔走。どうも作りが弱かったみたい。でも結局、今日は直らんかった。

投稿者 sfujisawa : 23:20 | コメント (0)