« Neuron 2/2 | メイン | Nature 2/8 »

2006年02月07日

Phys Rev Lett 2/10

Relation between Single Neuron and Population Spiking Statistics and Effects on Network Activity
Hideyuki Cateau and Alex D. Reyes

Reyes ラボの加藤英之さん。Synfire chain を Fokker-Plank 方程式で記述する、という内容。

Fokker-Plank 方程式は、確率密度の時間変化を記述する偏微分方程式です。

例えば t=0 で x=0 の点にいる粒子のブラウン運動を考えてみます。t=0 だと粒子の位置の確率密度分布はデルタ関数を用いて、p(x) = δ(x) とあらわされるでしょうが、t が大きくなるに従って次第に平べったい紡錘型の分布になることが想像できると思います。この p(x,t) を記述するのが Fokker-Planck 方程式です。(式の形は拡散方程式に似ています。)


それで、Reyes 2003 NN 論文の現象を数理的に記述するのが本論文の内容です。具体的には、N 個のニューロンを含む各 Layer での膜電位 Vm の確率分布 p(Vm, t) をFokker-Planck で記述するのが目的です。

(↑Reyes 論文は、ニューロンが synfire 的に feed-forward でつながっているとき、Layer 1 に Gaussian noise 入力を入れても、後方の Layer では Synfire 効果によりリズミックな出力が観察される、という論文。)


それで、今回の論文のポイントは、ニューロンの発火が、Poisson 過程ではないと仮定したところ。

これは、たぶん、Poisson 過程を仮定すると、うまくいかなかったためだと思う。何でうまくいかないかというと、ニューロンが Poisson 過程で発火するとすると、その inter-spike interval(ISI)は、指数分布に従う。つまり、t=0 のとこにピークが出るような分布。これを使うと、Fokker-Planck 方程式を解いたときに、Reyes 実験のような繰り替えし構造が出なかったのだと思う。(たぶん。)

(モデル細胞に、NMDA channel や NaP channel (persistent sodium channel) のような持続性のカレントを仮定すれば、たぶん解決できるのだろうが、ただ、それでは理論としての一般性がどうしても弱くなるので避けたと思われる。この論文では、モデル細胞にはもっともシンプルな leaky integrate-and-fire neuron を用いている。)

それで、neuron の ISI の分布形状を、指数分布ではなくガンマ分布であると仮定した。ISI 分布がガンマ分布であると仮定すると、その分布形状は実際のニューロンの ISI 分布と似たものになる。(たとえば 論文 Fig1a-middle)。
(ガンマ分布 Γ(α,σ) は α=1 のとき指数分布となることに注意。)


その仮定のもとで得られた Fokker-Planck 方程式が、式9(ノイズ入力が Gaussian noise のとき)あるいは式13(ノイズ入力が Gaussian noise でないとき)というわけです。

要約すると、各ニューロンの発火の ISI を、指数分布(←発火が Poisson 過程の場合)ではなくガンマ分布で近似すると、Reyes 論文の現象をうまく Fokker-Plank 方程式で記述できる、ということです。

投稿者 sfujisawa : 2006年02月07日 19:15

コメント

コメントしてください

サイン・インを確認しました、 . さん。コメントしてください。 (サイン・アウト)

(いままで、ここでコメントしたとがないときは、コメントを表示する前にこのウェブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)


情報を登録する?