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2005年10月13日

脳波メモ

前回のラボセミナーはアントンのJournal clubで、Tononiのこの論文を紹介したのだが、脳波の話になると、俄然ギューリーが興奮してくる。とくにこの論文では、Fig2の覚醒下でのTMS-responseを見て、「これは単なるalpha波のリセットじゃねーのか」と声高に主張していた。(Fig1でalpha波がきれいに見えている(つまり覚醒下で目をつぶっている状態)のが理由。)まあ、それはともかくとして、ギューリーは脳波(やLFP)の話になると話が止まらなくなる。どうやら重度の「脳波マニア」みたい。話を聞いてるだけで勉強になって面白いのですが、話がマニアックになるとついていけなくなってしまうので、少し僕も勉強することにしました。

今回は、NonREM睡眠時でのCortexで見える脳波についてまとめてみました。

(1) Slow oscillation: <1 Hz, generally 0.5~1 Hz
  発生源:Neocortex。
  理由(i) thalamusを切除してもcortexでslow oscillationが残る。[Ref]
  理由(ii) cortexを切除すると、thalamusではslow oscillationが消える。[Ref]
(いわゆるUP-DOWN stateは基本的には麻酔のartifactと考えられていますが、脳波的にはslow oscillationに対応すると考えればいいと思います。)
(2) Spindle: 12~15Hz (Human), 7~14 Hz(Cat), Rat ~14 Hz(Rat)
  発生源:thalamic reticular (RE) neuronがペースメーカー 。[Ref]
  ただし、広域でのspindleの同期には、Neocortexが必要。[Ref]
(3) Delta: 1~4Hz
  発生源:thalamus起源(thalamocortical neuron)とneocortex起源の2種類ある。

端的な模式図がありました。
0.gif
Steriade の Neurosci 2000のFigure8をぱくりました。(Steriade先生、すいません。。)

上図はCatのintra/extra記録と、humanのEEGを比較したもの。
Slow oscillationは、NonREM中で、intra記録でUPからDOWNに遷移するときに、extra記録で上向きに観察されている波。この図では、Slow oscillationの後にspindleが続いている。(この、slow oscillation-spindleのペアは、よく観察される。)

Human(scarp)でのEEG記録では、slow oscillationはNREM時に下向きの(この記録では下向きが+らしい)大きな波として観察される。(これを、別名K-complex(KC)というらしい。)NREMのStage2ではslow waveにspindleが続くのが観察され(KC/spindle)、NREMのState3~4ではslow waveにdeltaが続くのが観察される(KC/delta)。(脳波による睡眠 stage の分類(ヒト)の一覧表は、このページにありました。)

Steriadeによる、slow wave (K-complex)、spindle、delta波の生成メカニズムの模式図。
f343.jpg
Steriadeの本のFig3.43をぱくりました。

ところで、Slow oscillationが初めて記述されたのは、1993年と結構新しい。それ以前までは、Slow wave(徐波、4Hz以下の波)として一緒にされていた。Steriadeの1993年の論文(ネコのintra記録でslow oscillationを発見し、ヒトEEG記録で確認)により、slow oscillation (<1Hz)とdelta (1-4Hz)がはっきりと分けられるようになる。

さて、ほんとは、Cortex/Hippocampus間やCortex/Cortex間での脳波の同期・伝播や、脳波リセットなどについて(とくに覚醒下と睡眠下での違いなど)を書きたかったのですが、今日は疲れたのでまた今度まとめてみます。

*以上のまとめは以下の本の3.2節を参考にしました↓。Steriadeも重度の脳波マニア。
Neuronal Substrates of Sleep and Epilepsy、Mircea Steriade (Cambridege Press, 2002) サンプル
(ところで、Amazonでこの本のカスタマーレビューを書いているbrainfreakさんって、なんとなくpooneilさんのような気がするのですが。。気のせい?)

投稿者 sfujisawa : 2005年10月13日 22:06

コメント

ご無沙汰してます。愛知県在住ですか…それは自分ではないですよ。というかガヤのブルーバックス以外でamazonとかの書評書いたことないです。それはそれとして今回のまとめはいいですね。Steriadeの話はほんとうに古典的生理学者のアプローチであれもあった、これもあったというかんじでどうにもフォローしきれないので、こういうのはありがたいです。ところでブザキやSteriadeはやっぱり臨床医としてのバックグラウンドを持っているということなのでしょうか。

投稿者 pooneil : 2005年10月14日 06:40

ごめんなさい!勘違いでしたか。。
ギューリーが臨床の話をするのはあまり聞いたことがないのですが、ホームページで彼のCVを見てみると、MDとPhDの間に10年開いているので、この間臨床をやってたのかもしれないですね。この辺の話も面白そうなので今度聞いてみます。(教えてもらっても英語が聞き取れないのがつらいところですが。。)

投稿者 しげ : 2005年10月14日 09:10

はじめまして。大分前からページ見つけて読ませて頂いております。
ところで、ギューリー氏とブザキ氏が同一人物である事を、恥ずかしながら今気がつきました・・・。Gyorgy、oの上に・・(点々)でそう読むんですね(汗)。Michael Hausserもホイザーでなくてハウザーだと思ってたし。ブザキ研にギューリーという人がいるのかと思ってました。。。なんか変だなーとは思ってたんですが。。。。

投稿者 Ryo : 2005年10月14日 13:06

Ryoさん、まじめまして。(研究留學録のRyoさんですよね?)大英帝國時代から楽しく読ませてもらっています!
正しい発音は「ギューギィー・ブジャキ」らしいのですが、発音しづらいのでニックネームが「ギューリー」らしいです。どちらにしても呼びにくいのでみんなは「ユーリー」と発音してますが。。

投稿者 しげ : 2005年10月14日 14:54

どもです。大英からカナダの田舎へ移動して3ヶ月経ちました。よく考えたら飛行機で2時間位のご近所?ですね。
SFNへは行かれますよね。ワシントンで僕と握手!

投稿者 Ryo : 2005年10月14日 17:07

ではワシントンで!

投稿者 しげ : 2005年10月14日 18:52

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