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2005年10月21日
Moserのトーク
ちょうどタイムリーなことに、今日の夕方、コロンビア大の Medical campus で Moser夫妻のトークがあったので、聞きに行ってきました。
May-Bitt Moser(妻)のほうが Entorhinal cortex の "grid cell" について。話のメインは、彼らの Nature 2005 でしたが、何個かNewのデータも入ってました。
ここで、簡単に "grid cell"の特徴についてまとめてみると、
(1) grid cell の place field は等間隔にgrid状に存在する。gridの間隔は30~50cmと、比較的広い。gridの交線はだいたい 60°で一定。(Nature 2005 Fig1-2)
(2) 大きい実験箱にいるときも小さい実験箱にいるときも、grid の間隔は変わらない。(Fig1)
(3) grid cellは、ECのII/III層だけではなく、V/VI層にも存在する(New)。(II/III層が海馬へのInputで、IV/Vそうが海馬からのOutputであることを考えると、入出力のどちらにもgrid cellがあることは少し不思議な感じがしますね。)
(4) 各層で、層の深い方に行くほど、grid間隔の大きい細胞が多い。(Fig2)
(5) lacal cueの位置をずらすと、gridもそれにつれられてずれる。(Fig4)
(6) 暗い環境に変えても、gridは保持される(Fig5)
(7) 新規環境でも、1分ぐらいでgrid状の place field が形成される。(Fig6)
(8) 同じgrid cellで、同じ環境であれば、gridの位置は、trialごとに変化することはなく、安定している。
(9) しかし、同じgrid cellで違う環境の場合(例えば円形の実験箱と四角形の実験箱)、gridの間隔は変わらないが、gridの位置が少し(10cmぐらい)シフトする。(New)
(10) ECには、grid cell意外にも、head directionに反応する細胞もある。II/IIIではgrid cellの方が比較的多いが、V/VI層ではhead direction cellの割合の方が多くなる。(ちなみに、head direction cellはsubiculumにも多いことが知られています。)
で、Moser妻は、このような place fieldは、① Landmark-basedに形成されるのか、あるいは② Self-motion-basedに(つまりpath integration)によって形成されるのか、ということをdiscussionしていました。上述の(2)や(6)や(7)のデータからは、path integrationかと考えられるが、(5)のデータからするとLandmark-baseなので、まだ何とも言えない、という結論でした。それにしても、やっぱり面白いですね、grid cell。海馬の入力もとであるECにこんな細胞があるとは、ほんとに驚きです。
次に、Moser旦那の方は、海馬CA1、CA3、DGやECでのplace fieldのremappingの話など。話のストーリー的には、海馬ではどこで pattern separation と pattern cmpletion が行われているか、という内容。
メインの話は、彼らの Science 2004a,2005(参考)、Neuron 2005(昨日のエントリー参考)とかでした。
面白かったのは、DGでも、Neuron 2005の円形の実験箱と四角形の実験箱への7段階変形の実験をやっていて、DGでは、2段階目か3段階目ぐらいでplace field が変化してしまう、というデータ(unpublished)。つまり、DGはpattern separationの機能が強い、とMoserは述べてました。
ところで、以前ギューリーがラボミーティングの時に話してたのですが、Moserのラボにはテクニシャンが7人もいるらしいですね。ノルウェーの研究界のホープらしくて、研究費をばんばんもらっているらしい。その話をしてるとき、うちのラボの誰だったかがギューリーに質問。「なんでうちのラボにはテクニシャンがひとりもいないんですか?」ギューリーの答え「テクニシャンが全部やってくれたら、おまえらポスドクの勉強にならないからだよ。」 うーん。。
投稿者 sfujisawa : 2005年10月21日 20:27
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